臨床心理士が解説する知能検査 ~WAIS編~

 

皆さん、こんにちは。

 

今回は、自身の得意な分野や苦手な分野など自身の能力をはかることのできる知能検査について、埼玉県さいたま市でカウンセリングを行う、心理学の専門家である臨床心理士・公認心理師の筆者がご紹介したいと思います。

 

子供向けである知能検査のWISC検査をご紹介いたしましたが、今回は、そんな知能検査の中でも大人を対象に行うWAIS検査編と題してご紹介したいと思います。

過去にWAISを取ったことがあるけど結果がよくわからなかったという方、これからWAIS検査を取ってみようか悩んでいる人に是非、読んで欲しい話になっています。当ページでは簡単にWAISのご紹介をしていますが、もっと詳しく知りたいという方は心理オフィスKのWAIS-Ⅳ解説ページへお進み下さい。

 

そもそもWAIS検査とは!?

 

WAIS検査とは、正式にはウェクスラー式の成人用の知能検査のことです。

全体の知能と4つの知能(言語理解・知覚推理・ワーキングメモリー・処理速度)のいわゆるIQがわかります。

 

現在、日本では第4版のWAIS-Ⅳ検査が2018年より実施されていますが、実施機関によっては一つ前のバージョンのWAIS-Ⅲを行っているところが多くあります。

 

WAIS-ⅢとWAIS-Ⅳで多少の変わった個所がありますが、今回は最新版のWAIS-Ⅳを中心に解説いたします。

 

(対象年齢)  16歳0か月 ~ 90歳11か月

16歳だと、WISC(子ども用詳細はリンクの別ページで確認)とWAISの両方を実施できるのですが、知的能力が高そうな人の場合はWAISを実施する場合が多いようです。

 

(所要時間)  60分 ~ 120分

一般に知的能力が高い人ほど多くの問題を実施するために、多くの時間が必要な形になっています。また、熟考するタイプの人ほど検査時間が長くなる作りになっています。

 

WAIS検査でわかる内容とは!?

 

WAIS検査には基本検査が10補助検査が5あり、全15の検査から成り立ちます。

 

15の検査それぞれが、4つの知能(言語理解・知覚推理・ワーキングメモリー・処理速度)にまとめられており、以下のようになっています。

 

WAIS-Ⅲでは、言語性・動作性の知能指数を算出する形になっていましたが、WAIS-Ⅳでは廃止されています。

 

基本検査 補助検査
言語理解 類似・単語・知識 理解
知覚推理 積木模様・行列推理・パズル バランス・絵の完成
ワーキングメモリー 数唱・算数 語音数列
処理速度 符号・記号探し 絵の抹消

 

(言語理解) 言葉による理解や把握能力に関する力=VCI

その人の持っている語彙力や言葉に関する理解力、推理力などがわかる指標になっています。

 

(知覚推理) 目で見たものを理解や把握能力に関する力=PRI

その人の持っている視覚的な情報処理能力、視覚的イメージ力、空間認知の力などがわかる指標になっています。

 

(ワーキングメモリー) 聴覚的な記憶力や注意集中に関する力=WMI

その人の持っている聴覚的な情報記憶能力、注意集中力、プランニング力、他者とのコミュニケーションの際の聞き取り能力などに関わる指標になっています。

 

(処理速度) 手先の器用さや作業スピードの速さに関する力=PSI

その人の持っている視覚情報を素早く正確に判断して、性格に書く力、筆記機力、視覚的な短期記憶力、動機づけや注意の持続力がわかる指標になっています。

 

WAIS検査の結果は!?

 

WISC検査は、全検査IQと先ほどの4つの言語理解・知覚推理・ワーキングメモリー・処理速度のIQがそれぞれ、100を平均として数値化されて現れてきます。

 

合成得点(IQ) 分類 全体での割合
130以上 非常に高い 2.5%
120~129 高い 7.2%
110~119 平均の上 16.6%
90~109 平均 49.5%
80~89 平均の下 15.6%
70~79 低い(境界域) 6.5%
69以下 非常に低い 2.1%

 

(例)

全検査=89 言語理解=103 知覚推理=80 ワーキングメモリー=106 処理速度=76

 

このような形で、全検査IQと4つの指標ごとのIQが分かるような形で検査結果として出てきます。

 

結果から、4つの点数のバラつきが大きいと、その人の頭の中で能力にそれだけ差があり、何かうまくいかない原因になるかもしれません。

 

すべての数値が低いという場合には、知的障害などの可能性が考えられたりします。また、うつ病や適応障害、統合失調症の状態など、その人の状態によっては数値が大きく落ち込む場合があります。

 

WAIS検査の結果の解釈は!?

 

その人ごとの全検査IQと4つの指標ごとのIQ、またその人の生育歴、性格特性、行動観察、現在の環境など総合して、その人の特徴を解釈していきます。

 

つまり、検査のみでわかることは実は限られており、検査のみを受けたからと言ってすべてがわかるわけではありません。

 

この辺りは勘違いされている方が多く、検査を取れば発達障害や何か精神疾患の有無がすぐに分かったり、その人の生きづらさの根本的原因がすべてわかるわけではないということです。

 

あまり心理学を勉強していない人ほど、知能検査を取ればわかると考える人も居ますが、必ずしもそうでない場合も多くあります。

 

結果解釈の例1

 

全検査=89 言語理解=103 知覚推理=80 ワーキングメモリー=106 処理速度=76

・「見て考える」よりも「聞いて考える」方が強いため、視覚情報は簡単なものにして、音声による情報提示も大切でしょう。

・見通しを持ちやすくするために、言葉で予め見通しを伝えることが必要でしょう。

・実際に筆記量を減らしたり、時間を多く取ったり、スマホやタブレットなどのツールを使えると良いでしょう。

 

結果解釈の例2

 

全検査=106 言語理解=91 知覚推理=120 ワーキングメモリー=91 処理速度=115

・「聞いて考える」よりも「見て考える」方が強いため、なるべく視覚情報を使うといいでしょう。

・指示の聞き忘れもあるので、メモを取って忘れないようにするなどの工夫が必要でしょう。

・本を読んで学ぶよりもイラストの多い漫画や動画などで覚えると良いでしょう。

 

結果解釈の例3

 

全検査=99 言語理解=111 知覚推理=109 ワーキングメモリー=85 処理速度=83

・言語の理解や推理力は高いが、記憶力や作業はゆっくりなため力を発揮できない可能性があるので、仕事量の調整や時間の調整が必要である。

・話をすることよりも書くことが苦手であるために、言葉でのアウトプットを行えると良いでしょう。

・聞き漏らしも多いのでメモをとって忘れないようにするなどの工夫が必要でしょう。

 

結果解釈の例4

 

全検査=85 言語理解=80 知覚推理=78 ワーキングメモリー=100 処理速度=102

・初めての活動は、活動の流れや目標を予め調べて置かないと手順が分からなくなるかもしれません。

・複雑ではない単純な作業を得意としていることが多いでしょう。

・機械的な暗記は得意でしょうが、思考や推論が必要な場面でつまずき、自信を失いやすいために対応が必要である。

 

これらはこのような形のあくまでも一般的な見方なので、実際には個々人に応じた情報収集を元にした解釈が重要です。

 

WAISが行える場所は!?

 

WAIS検査が実施できる場所としては、病院やクリニックなどの医療機関、大学附属の一般に開かれた相談機関、個人でやっているカウンセリング機関など実施できるところがあります。

大学の心理学科付属の相談施設では数千円から、個人のところでは数万円程度までと値段の幅があります。

 

あまりに安すぎるような場所では、心理の専門職が実施しない場合や研修生が行っていたり、数値のみの結果しかもらえず説明も少ないという場合もあります。

 

同じ検査でも誰が取るか、どこで取るかというので、数値に影響することも多分にあるので、信頼できる場所で取る方がベストと言えるでしょう。

 

WAIS検査のまとめ

 

今回は、埼玉県さいたま市東浦和にあるほんだカウンセリングオフィスでカウンセリングを行う、心の専門家である臨床心理士・公認心理師の筆者が、成人版のウェクスラー式知能検査であるWAIS知能検査についてその用語についてと、結果の解釈についてお話いたしました。

 

WAIS検査というものが一般的に広まりつつあり、受けた人からよかったと聞いたからと気軽に受けたいという人も中にはいたりします。

 

しかし、WAIS検査は興味本位で受けるものではなく、生きづらさの理解ため不得意な部分と得意な部分を把握するため、今後の治療のために認知側面を把握するためなどで、用いられるものです。

 

WAIS検査に興味のある人は、まずは専門家と相談の上で実施していくことが必要かどうか吟味していくことが大切でしょう。

 

今回のまとめを見ての感想や質問はコメント欄のお願いします。また、当カウンセリングオフィスでWAIS知能検査を受けたいという方は以下のお申込みページへお進み下さい。

 

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