臨床心理士が解説する知能検査 ~WISC編~

 

皆さん、こんにちは。

 

今回は、自身の得意な分野や苦手な分野など自身の能力をはかることのできる知能検査について、埼玉県さいたま市緑区でカウンセリングを行う臨床心理士・公認心理師の筆者がご紹介したいと思います。

 

今回は、そんな知能検査の中でも子供に対して用いられる、WISC検査編と題して、ご紹介したいと思います。

お子さんにWISC検査を取ってもらったけど、結果がよくわからなかったという方、これからお子さんにWISC検査を取ってみようか悩んでいる人に是非、読んで欲しい話になっています。

 

そもそもWISC検査とは!?

 

WISC検査とは、正式にはウェクスラー式の児童用の知能検査のことです。デイビッドウエクスラーによって開発されて、現在も教育、福祉などの分野で多く使われているものです。

全体の知能と4つの知能(言語理解・知覚推理・ワーキングメモリー・処理速度)のいわゆるIQと、それぞれの指標間のばらつきがわかります。

 

現在、日本では第4版のWISC-Ⅳ検査が2010年より実施されていますが、アメリカでは第5版のWISC-Ⅴが実施されており、日本でのデータが集められている段階です。

 

(対象年齢)  5歳0か月 ~ 16歳11か月

5歳0か月から実施できるものですが、ひらがなの習得の上で行う課題もあるため、学齢期以降の実施が望ましいとされています。

 

(所要時間)  60分 ~ 120分

年齢が高くなるほど、課題数が多くなるので時間がかかるような作りになっており、また、熟考するタイプの子ほど検査時間が長くなる作りになっています。

 

WISC検査でわかる内容とは!?

 

WISC検査には基本検査が10補助検査が5あり、全15の検査から成り立ちます。

 

15の検査それぞれが、4つの知能(言語理解・知覚推理・ワーキングメモリー・処理速度)にまとめられており、以下のようになっています。

 

基本検査 補助検査
言語理解 類似・単語・理解 知識・語の推理
知覚推理 積木模様・絵の概念・行列推理 絵の完成
ワーキングメモリー 数唱・語音数列 算数
処理速度 符号・記号探し 絵の抹消

 

(言語理解) 言葉による理解や把握能力に関する力=VCI

その人の持っている語彙力や言葉に関する理解力、推理力などがわかる指標になっています。

 

(知覚推理) 目で見たものを理解や把握能力に関する力=PRI

その人の持っている視覚的な情報処理能力、視覚的イメージ力、空間認知の力などがわかる指標になっています。

 

(ワーキングメモリー) 聴覚的な記憶力や注意集中に関する力=WMI

その人の持っている聴覚的な情報記憶能力、注意集中力、プランニング力、他者とのコミュニケーションの際の聞き取り能力などに関わる指標になっています。

 

(処理速度) 手先の器用さや作業スピードの速さに関する力=PSI

その人の持っている視覚情報を素早く正確に判断して、性格に書く力、筆記機力、視覚的な短期記憶力、動機づけや注意の持続力がわかる指標になっています。

 

WISC検査の結果は!?

 

WISC検査は、全検査IQと先ほどの4つの言語理解・知覚推理・ワーキングメモリー・処理速度のIQがそれぞれ、100を平均として数値化されて現れてきます。

 

合成得点(IQ) 分類 全体での割合
130以上 非常に高い 2.5%
120~129 高い 7.2%
110~119 平均の上 16.6%
90~109 平均 49.5%
80~89 平均の下 15.6%
70~79 低い(境界域) 6.5%
69以下 非常に低い 2.1%

 

(例)

全検査=89 言語理解=103 知覚推理=80 ワーキングメモリー=106 処理速度=76

 

このような形で、全検査IQと4つの指標ごとのIQが分かるような形で検査結果として出てきます。

 

結果から、4つの点数のバラつきが大きいと、その人の頭の中で能力にそれだけ差があり、何かうまくいかない原因になるかもしれません。

 

また、すべての数値が低いという場合には、知的障害などの可能性が考えられたりします。

 

WISC検査の結果の解釈は!?

 

その人ごとの全検査IQと4つの指標ごとのIQ、またその人の生育歴、性格特性、行動観察、現在の環境など総合して、その人の特徴を解釈していきます。

 

つまり、検査のみでわかることは実は限られており、検査のみを受けたからと言ってすべてがわかるわけではありません。

 

この辺りは勘違いされている方が多く、検査を取れば発達障害や何か疾患の有無がすぐに分かったり、その人の生きづらさの根本的原因がすべてわかるわけではないということです。

 

あまり心理学を勉強していない人(医師や学校の先生など)ほど、知能検査を取ればわかると考える人も居ますが、必ずしもそうでない場合も多くあります。

 

結果解釈の例1

 

全検査=89 言語理解=103 知覚推理=80 ワーキングメモリー=106 処理速度=76

・「見て考える」よりも「聞いて考える」方が強いため、視覚情報は簡単なものにして、音声による情報提示も大切である。

・見通しを持ちやすくするために、言葉で予め見通しを伝えることが必要である。

・筆記量を減らしたり、時間を多くとるという配慮があると良いとされている。

 

結果解釈の例2

 

全検査=106 言語理解=91 知覚推理=120 ワーキングメモリー=91 処理速度=115

・語彙力や知識を増やすために理解に合わせた個別での指導が必要である。

・言葉による指示だけではなく、絵や図などを用いた指示をや説明を活用できると良い。

・非言語的な力を発揮できるような機会を本人に与えて自信を付けてもらうことが大切である。

 

結果解釈の例3

 

全検査=99 言語理解=111 知覚推理=109 ワーキングメモリー=85 処理速度=83

・言語の理解や推理力は高いが、記憶力や作業はゆっくりなため力を発揮できない可能性があるので、課題量の調整や時間の調整が必要である。

・話をすることよりも書くことが苦手であるために、回答方法の工夫が必要かもしれません。

・指示や説明はわかりやすいものを繰り返す必要がある。

 

結果解釈の例4

 

全検査=85 言語理解=80 知覚推理=78 ワーキングメモリー=100 処理速度=102

・初めての活動は、活動の流れや目標を明示して見通しを持ちやすくする。

・個別的な指導で知識などの本人の能力の底上げを行う。

・低学年では機械的な暗記で顕在化しにくいが、高学年になり思考や推論が必要な場面でつまずき、自信を失いやすいために対応が必要である。

 

これらはこのような形のあくまでも一般的な見方なので、実際には個々人に応じた情報収集を元にした解釈が重要です。

 

WISCが実施できる場所は!?

 

WISC検査が実施できる場所としては、病院やクリニックなどの医療機関、教育相談センターや発達相談窓口などの教育機関、大学附属の一般に開かれた相談機関、個人でやっているカウンセリング機関など実施できるところがあります。

市区町村など公立のところでは子ども向けに無料で実施できるところもありますが、その多くは有料で数千円程度から数万円程度かかるところもあります。

 

また、あまりに安すぎるような場所では、心理の専門職が実施しない場合や、数値のみの結果しかもらえず説明も少ないという場合もあります。

 

WISC検査のまとめ

 

今回は、埼玉県さいたま市東浦和でほんだカウンセリングオフィスを営む、心の専門家である臨床心理士・公認心理師である筆者が、子供の知能検査であるWISCについて解説いたしました。

 

WISC検査を受けるというのが一般的になりつつあり、よかったと聞いたからと気軽に受けたいという声を聴くことがよくあります。

 

しかし、実施で子どもへの負担があったり、結果から偏見が生まれる場合も少なくありません。

 

その辺りは、必要性も十分に見極めてから、子ども自身に結果役立ちそうな場合、その子がよりよく生きていけるように考えられる場合などで、実施していくというのがベストでしょう。

 

今回のまとめを見られて、疑問を持たれた方や、WISC検査に関して何かご質問がある方は、当カウンセリングオフィスのカウンセリングを利用して是非聞いてみて下さい。

 

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