臨床心理士がわかりやすい教える本当に怖い薬物依存!?
皆さん、こんにちは。
芸能人の薬物使用という話がまた報道されてきたりしていますね。
そこで、今回は心の専門家である臨床心理士・公認心理師の筆者が本当に怖い薬物依存と題してお話したいと思います。
身近に薬物依存の人が居る方や、自身がその可能性がある方、また、報道だけではわからない薬物依存について詳しく知りたいという方は、是非最後まで読んでみて下さい。
そもそも薬物依存とは!?
まず始めに薬物依存とはどのような状態なのかをみていきたいと思います。
薬物依存とは、大麻や覚せい剤などの薬物を摂取したいという欲望が強く、自分ではコントロールできなくなっている状態です。薬物を使って同じ効果を得ようとし続けるために徐々に量が増えていき、より依存状況が深刻化していくという特徴もあります。
一度くらい大丈夫だろうも思っていると一度でやめられずに薬物依存の状態に陥っていたりします。主にこのような薬物依存の状態を引き起こすのは、大麻やヘロイン、覚せい剤、MDMAと呼ばれるものによると言われています。
実は、意外に知られていませんが、うつ病やADHD、トラウマケアなどの患者に、薬物を長期間に渡って摂取することによって、それなしでは落ち着かなくなってしまい、引き起こされる薬物依存というものも存在しています。
このような薬物依存に陥ってしまう要因としては、家族やパートナー、友人に薬物依存の人が居たり、ストレスが多い仕事や家庭環境であったり、何かの失敗体験による自信の喪失などといった要因も薬物依存に陥る危険性が増えると言われています。
薬物依存の症状!?
①薬物を使いたい強い欲求
薬物依存に陥ると、薬物が切れてくると薬物を使いたい強い欲求が湧いてきます。数週間、数ヶ月程度やめていても何かのきっかけで急に使いたくなるということもあります。
その結果、どうにかして薬物を手に入れようと、何件も病院を回ったり、薬物を買うために犯罪行為を行う人も出てきたりします。
②自己コントロールができなくなる
例えば、今日はここまでにしておこう、今日はこの量にしておこうと言ったような自己制御がだんだんできなくなってきてしまいます。
また、自分ではコントロールできているつもりで、実は薬物がなしではやっていけなくなっていたという自体が起きたりすることもあります。
③薬物の使用をやめたり、量を減らすと離脱症状がでる
離脱症状とは、不安や不眠、抑うつ、焦燥感、幻覚、妄想、手足の震え、発汗、下痢、嘔吐などの症状がでます。
そのような不快な離脱症状に対応するために、再び薬物を摂取してしまうということになってしまいます。
④薬物使用中心の生活へ
薬物の使用に身体が慣れてしまい、徐々に量が増えていきます。一日の大半を薬物の入手、使用、回復のために使うようになります。
仕事や家庭が疎かになり薬物を使うための生活中心の生活になっていき、発覚していくこともあります。
薬物依存の実際!?
それでは薬物依存の実際について、皆さんに少しだけご紹介したいと思います。
20代の男性Aさん。地方出身で関東圏の大学生。大学受験に失敗して、希望よりもかなり偏差値の低い大学に入学することになってしまったAさんは自暴自棄になっていました。そこに大学でできた友人のBから、気分が良くなる薬があると言われてもらいました。始めは怪しい薬としまいこんでいたのですが、高校時代から付き合っていた彼女に別れを告げられたショックで、試しに飲んでみようと薬物に手をつけ始めてしまいます。使ってみると気分が確かに良くなり、今まで悩んでいたことが嘘のように楽しい気分になりました。その薬を再びもらいたいとBに相談すると、Bがその薬を買ったという人を紹介されて、その人から買うようになりました。しかし、お金がなくなってしまい、一度は買うことを諦めましたが、薬がないと落ち着かないようになったり、気持ち悪さ、過度な発汗から、借金をしてまで薬を買うようになります。徐々に大学にも行けなくなり、あまりに薬にのめりこんでしまったAを心配して、薬を勧めてきたBからもやめるように言われる程になってしまいました。自分でも、何度もやめようと思い努力を続けました。薬物の代わりにタバコを吸ったり、アルコールを飲んでみたり、しかし、どの努力もあまり効果はありませんでした。薬物を買ったある時自宅に帰る途中に挙動が不審であると呼び止められて、薬物の所持で逮捕されることになりました。Aさんのこの時の正直なところは、これでやっと薬物がやめられると心のどこかでホッとしていたと言います。
薬物依存への治療方法!?
薬物依存を解決する特効薬と言うべきものは、今は存在していません。しかし、周囲からの適切なサポートで薬物を使わない生活を続けることで薬物依存から回復することはできます。
この薬物依存からの回復に際して一番重要なのは、薬物をやりたくなった時にやりたいという気持ちを援助者に伝えて、やってしまった、やめられないと嘘をつかずに正直に話せることだと言われています。
逮捕されて刑務所で過ごしていると、出所するために周りと時には自分をも欺いて、薬物なんてやりたくない、薬物なんて無くて大丈夫と大抵の場合は自分でも気が付かない間に嘘を付きます。
この嘘をつく習慣が、出所後にも病院への通院や構成プログラムの中でも続いてしまい、ふっとした瞬間にやってしまった薬物から自責の念や警察に通報される怖さから、病院や更生プログラムから足が遠のいてしまい、結果として再び薬物依存に陥ってしまいます。
そうならないためにも、本人が安心して薬をやりたい、やってしまった、やめられないという言わばヘルプコールを出せる関係がどのような治療の場合にも大切になってきます。
①入院や収監による対応
薬物を使えないように精神科の病院に入院したり、刑務所に収監したりすることは、一般的には効果的と思われるかもしれません。
しかし、一生に渡ってその人の自由を奪っているわけにはいきません。いずれはそのような場所から出なくてはいけません。
薬物の使用で一番多いのが、実はそのような入院治療の後だったり、出所後の直後だったりします。つまり、入院や収監により薬物を断つことはあまり効果的とは言えません。
②通院による治療
次に通院での治療があります。依存症を見てくれる精神科へ通院をしながら回復を目指していくというものです。
しかし、これも問題があると言われています。ある依存症病院への薬物依存者の経過を追っていく調査によると、3ヶ月以内に7割程度の患者が治療を自己中断して、通院しなくなると言われています。
依存症治療において大切なものは継続していくことだと言われています。多くの通院患者は、再び薬物を使ってしまったことへの自責の念や警察に通報されるのを嫌い、通院しなくなってしまうと言われています。
実は、治療開始当時は薬物を使いながらも、継続して通院し続ける方が、その後の回復を良好であると言われており、いかに継続が難しく、大変かがわかります。
③自助グループによる支援
薬物依存者の自助グループとしては、NA(ナルコティクスアノニマス)が有名です。
同じ体験を持つ人たちが集まって、薬物から解放された人生をどのように過ごしていくかということをお互いに分かち合っていきます。
依存者がお互いに助け合って、薬物の使用をやめて、新しい生き方を一緒に見出す場所とされています。国内にもいくつもの団体があり、住んでいる近くで参加することができます。
しかし、自助グループの中で、薬物の情報がよりシェアされてしまう可能性や、他者の薬物使用経験を聞くことによって、より薬物を使いたく活性化されてしまう可能性があると言われています。
④薬物治療プログラム
薬物依存治療のプログラムとしては、本人を対象のものや家族を対象のものなど、様々なものがあります。
認知行動療法としてのプログラムとしてSMARPPや、依存症家族に対する支援の仕方として成果をあげているCRAFTなどがあります。CRAFTに関しては以前まとめたものがありますので、詳しい方法に感じてはそちらをご覧ください。
SMARPP(スマープ)について簡単に紹介しておくと、この更生プログラムで大切にされているのは、望ましい行動に報酬を与えるという方法が取られています。報酬といっても金銭ではなく、プログラムにやって来た患者を「よくやってきましたね」とウェルカムといった雰囲気でプログラムを行っていくというのが主眼に置かれています。また、プログラムの出席状況に応じて賞状を渡すなど、安全で歓迎される雰囲気の中で治療を行っていくというものです。この安心できる雰囲気は継続した治療につながり、結果として薬物依存からの回復へとつながります。詳しいプログラムの内容をお知りになりたい方は、以下に著書を紹介していますので、そちらをご覧ください。
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本当に怖い薬物依存に関するまとめ
今回は、時折、芸能人の逮捕の報道によって世間を騒がせることの多い、薬物依存について、心の専門家である臨床心理士・公認心理師である筆者が、なるべくわかりやすく解説いたしました。
今回のまとめで、皆さんに薬物依存者への対応法を含めて正しい認識を持ってもらえたのなら幸いです。マスコミの報道は過激で、本人を叩くだけで、その後の回復へのプロセスやそのために大切ことについて、報道しないことも多くあります。
今回の薬物依存に関するまとめで皆さんに訴えたいのは、薬物依存からは周囲の協力や本人が適切なプログラムなどの治療を受けられれば、必ず回復できるものです。そして、そのために一番大切なのは、繰り返しになりますが、薬物依存者が安心して本音を言える環境や人間関係です。
今回のまとめを読んで、何か疑問点やもう少し説明して欲しい方はコメント欄までお寄せください。また、何か薬物依存に関してご相談がある方は当相談室のオンラインカウンセリングご利用下さい。