災害による単回性トラウマの症状と回復過程

 

皆さん、こんにちは。

 

東日本大震災から11年が経ちますね。震災から11年経ちますが、皆さんの心の傷は癒えているでしょうか?十分に癒えていて新しい生活を営んでいるという方もいれば、まだ心の傷が癒えずに苦しんでいるという方もいるかもしれません。

 

今回は、そんなまだ心の傷が癒えずに苦しんでいるそんな方に、震災によるトラウマの症状とその回復過程という題で、心の専門家である臨床心理士・公認心理師である筆者が解説したいと思います。

 

震災によるトラウマ

 

震災によるトラウマのことを一度の出来事によってトラウマになってしまうということで、単回性トラウマと言います。トラウマは、主に単回性トラウマと複雑性トラウマの2つのタイプのトラウマがあると言われています。単回性トラウマ(単回性PTSD)と複雑性トラウマ(複雑性PTSD)の2つについてまずはお話していきたいと思います。

 

単回性トラウマは、犯罪被害や地震、火災、津波、台風、などの自然災害など一回の大きな被害を受けて、心の傷となってしまうものを言います。いわゆる先の東日本大震災によって、揺れが怖くなってしまったり、水が怖くなってしまったりというものがこれに当たります。

複雑性トラウマは、暴行、DV、性的被害、家庭内暴力、戦争、などの長期間に渡る複数回の被害をうけて、心の傷となってしまうものを言います。男性が怖くなってしまったり、物音が怖くなってしまったり、夜が怖くなってしまったりというのがこれに当たります。

今回は、東日本大震災から10年が経つということで、単回性トラウマに関して、その症状と心の傷の癒えていく過程について見ていきたいと思います。この単回性トラウマは、実は東日本大震災を体験した人がすべて起こるものではなく、ストレスに耐える強さや体験した辛さによって、単回性トラウマになる場合とならない場合があります。今回のまとめを読んでなんだか当てはまるところが多いなという方は、もしかすると単回性トラウマになっている可能性もあるので、専門家への相談をお勧めします。

 

単回性トラウマの症状と回復過程!?

 

単回性トラウマの実際の症状について見ていきたいと思います。何かトラウマとなる出来事が起きてからどのような症状や状態を経て、回復していくのかという過程を見ていきたいと思います。

 

①そのままの記憶として保存される

 

先の震災のように命の危機を感じるほどの事態に遭遇すると人は、その出来事を自分の中で消化できずに人は、記憶をそのままの形で保存してしまいます。

日常でも何か嫌ことが起こり、気持ちが落ち着かなくなってしまうということが起きます。しかし、日常生活では適切な処理や解消が行われて、嫌なことが傷になって残るということはあまり起きません。

 

しかし、先の東日本大震災くらいの災害被害や犯罪被害のような大きな出来事を目の当たりにすると人は、その記憶や体験をすべていっぺんに処理することができずに、記憶そのままの形で残してしまうのです。

 

②フラッシュバックが起きる

 

そのままの形で保存されている記憶が、何かの反動で思い出される事態のことをフラッシュバックと言います。例えば、津波の映像を見て当時のことを鮮明に思い出したり、別の地震から当時の記憶が蘇ったりします。

フラッシュバックが起こると、その被害にあった時と同じような被害に合っているかのように感じてしまうというのがその特徴としてあります。フラッシュバックを起こすと、呼吸困難になったり、発汗したり、脈が速くなるという事態が生じてきてしまいます。

 

このフラッシュバックもどのタイミングで起こるのかは人それぞれで、同じような現場に立ち入って起こることもあれば、映像を見て起こることや一見すると関係のなさそうなものでも起きることもあります。

 

③フラッシュバックに反応する

 

先に述べたフラッシュバックが起きるようになってしまうために、そのような辛い事態を招かないように、人はフラッシュバックを起こしそうな事態を避けようとします。例えば、東日本大震災でいう海に近寄らないようにしたり、映像を見ないようにしたりします。

フラッシュバックが起きるような事態が生じないように、そのような場所を「避ける」ようになるというのは、そういわれたらそうだろうと思う人も多いかもしれません。自分を守る方法として、離れるという反応をするのは一般的です。

 

また、フラッシュバックへの反応として離れるもの以外にも、ある人は同じような苦しみを持つ人のため「戦うこと」という形でフラッシュバックや辛い記憶と付き合っていこうとする人もいます。

 

そして、フラッシュバックの反応として特に注意が必要なのが、小さな子どもや、強い被害を受けた人は、避けることも、戦うこともできずに、「固まってしまう」という場合もあります。

 

④過去を小さく、今を大きくしていく

 

今の現実の安心感や安全感を高めていくことで、過去の記憶やフラッシュバックを起こす頻度を少なくしていきます。安心感がなくてはトラウマを解決していくことはできないと言われるほどです。

今を豊かにすることで、大きく傷として残ってしまっている過去を小さなものにしていき、今を大きなものとすることができます。安心できる場所に身を置いて、安心できる人と関わることで、過去を小さくすることができます。

 

一人でできる安心感を高める方法としては、今を意識できるような呼吸法やリラックス法など、身体を使って今の安心安全感を体得できるようなものを取り入れていけると良いと言われています。

 

⑤安心安全の中で語れるようになる

 

安心安全というのが十分に確保されて、自分の心も準備ができた段階で、批判を受けないような状況で語ってみるというのは良いことです。ただ、無理して語る必要は当然ですがありません。

無理やり誰かに聞きだされた、やっとの思いで話をしたのに批判をされたというのは、トラウマの上塗りになってしまいますので、あくまでも自分のタイミングとして話してもいいかな、話してみたいなと思うのが大切です。

 

安心安全の状況で、辛かった過去を話しているという状態を確認できることで、トラウマ体験は凍り付いた鮮明な出来事から、過去の出来事として再編集することができるのです。トラウマの治療は主にこのようなメカニズムで行っていきます。

 

⑥つながりを作っていく

 

語ることで過去の記憶と再編集することができたら、同じ体験をした仲間と安心安全の仲間を作るというのも良いでしょう。東日本大震災を体験した人と一緒に話をしてみるというのもいいかもしれませn。

災害や事件であれば、一般的に自助グループ呼ばれたり、被害者の会、何かNPOの施設で、仲間とのつながりを作っていくことも良いでしょう。ただ、これもあくまでも自分のタイミングがあります。ある人は1年でこの会に参加できるけど、ある人は10年でやっとこの会に参加できるということもあります。

 

また、このような同じ経験を持つ人たちと安心安全のためのネットワークの一環としてつながることで、その先にいる治療者や支援者とつながっておくというのも良いかもしれません。

 

⑦再発に備えていく

 

過去として語れるようになり、仲間が増えたら、再発に備えた動きを取れると良いでしょう。しっかりとしたトラウマ処理を行わずにいる場合には、時として再発する場合もあります。

再発のきっかけとしては、何周年目などの記念イベントだったり節目の年、自身にストレスがかかった時、似た気持ちを持つ体験をした時、生活環境の大きな変化、自身の子どもが同じ年齢に達した時などです。今回このまとめを作成するのも10年目という節目だからという意味もあります。

 

このような再発のタイミングがあるかもしれないということを知っているだけでも心の準備ができますし、再発が起こりそうになったら安心安全な居場所や人で過ごしながら、無理をしないということが大切でしょう。また、必要に応じてトラウマ治療を受けてみるのもおすすめです。

 

単回性トラウマの症状と回復過程のまとめ

 

今回は、さいたま市東浦和でほんだカウンセリングオフィスを営む、心の専門家である臨床心理士・公認心理師である筆者が、東日本大震災から10年経つ今、単回性トラウマの症状と回復過程について大きく7つのステップでご紹介させて頂きました。

 

この7つのステップをすんなりと行く人もいれば、多くの時間をかけながらこの7つのステップを辿る人も居ます。同じ出来事体験してもトラウマになる人とならない人がいるように、その回復に関してもどのくらいの期間がかかるかは人それぞれだったりします。

 

今回のまとめを読んで、自分ももしかしたら東日本大震災のトラウマが残っているかもしれない、そんなトラウマの治療をしたいと思われてる方がいましたら、良ければ当カウンセリングオフィスのカウンセリングのお申込みページまでお進みください。

 

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