家族療法とはどんなカウンセリングの方法
皆さん、こんにちは。
今回は、家族療法とはどのような家族療法方法なのかというのを、埼玉県さいたま市でカウンセリングを行う臨床心理士・公認心理師の筆者が、皆さんにご紹介していきたいと思います。
家族療法というカウンセリングの方法を聞いたけどどのようなものか聞きたいという方や、家族療法を是非受けてみたいけど結局どんなものなのというのを知りたい方に是非読んでもらいたいお話になっています。
家族療法とは
家族療法というカウンセリングを受けたいと考えているのですが、家族全員でカウンセリングに行けばいいのでしょうか?
家族療法だからと言って必ずしも家族全員が来る必要があるわけではありません。夫婦できてもらっても構いませんし、親子できてもらっても構いません。また、実は一人で来てもらってもできるものだったりします。
ウィキペディアでの家族療法の説明を見てみると、家族を対象とした心理療法の総称と記載されています。しかし、現在行われている家族療法は必ずしも家族全体がカウンセリングの場所に来てもらわなくてもよいものだったりするのです。
家族療法が登場したのは1950年代と言われています。当時は個人の問題とされていた心の病が、実は家族関係が影響を及ぼしているという画期的な考え方として広く広まっていきました。当時の家族療法では、家族を全員カウンセリングに読んで、家族全員を対象にカウンセリングを行っていました。
それから時代は進み現代は、多様化の時代です。家族の形も様々あり、核家族化や単身赴任で遠方に居る場合もあるでしょうし、ペットも家族の一員ということもあるでしょうし、法律的には家族と認められていなくて家族という場合もあるでしょう。そのような時代にあって、家族療法は、カウンセリングの場に来れる人でも行えるように変化していきました。
家族療法受ければうちの子供の不登校の問題がなくなると聞いてきたのですが、本当にうちの子の問題がなくなりますか?
家族療法では、カウンセリングの対象者のことを「患者と認識された人(Identified Patient)」を略してIPと呼び、その人個人の問題ではなく、家族全体の問題として取り扱おうとするのが一番の約束事です。
他のカウンセリングの方法では、不登校などの問題を抱えた人をクライエントや患者として取り扱い、その問題を抱えた人の問題の解決を目指していきます。しかし、家族療法では不登校などの問題を抱えた人は、たまたま表にわかりやすい形で問題をして現れた状態にある人とみなしてカウンセリングを行っていきます。
例えば、子供が不登校という形で表現しているのは、父親が仕事で帰りが遅い→母親がイライラする→子供は落ち着かない→父親は家庭の雰囲気が良くなくより遅くなる→母親はよりイライラする→子供はより落ち着かなくなって学校にいくエネルギーがなくなる。
このような形でたまたま不登校という目に見える形で問題として現れただけで、もしかするとこのような家族の繰り返されるパターンによるものかもしれないのです。つまり、その人の問題として押し付けずにもしかしたら家族の問題から来ているかもしれないから、一緒に頑張っていこうというのが家族療法のスタンスだと思ってもらえるといいかもしれません。
家族療法のカウンセリングの進め方
家族みんなの問題と捉えるのが家族療法だというのはわかりました。では、どうやって家族療法ではカウンセリングを進めていくのですか?
家族療法では、繰り返される悪循環のパターンを家族の会話から探し出して、その悪循環のパターンを良循環のパターンへと変えていきます。
家族療法で治療を行っていくものというのは、システムと呼ばれるものです。システムとは、様々ありますが家族でのシステムでは、パターン化されたコミュニケーションの相互作用のあり方のことだと言われています。皆さんも自分の家族のコミュニケーションパターンと言って思い当たることはありませんか?
例えば、子供に何か問題が起きる→母親は心配で駆け寄る→父親はお前がちゃんと見ていないからだと母親を責める→子供は少しマシになる→母親は父親にも責任はあるという→父親は自分がいかに仕事が大変かを言う→両親の緊張が高まるので子供に何か問題が起こる
このような感じでわかりやすくあえて表現していますが、家族には繰り返し観察されるコミュニケーションパターンがあり、実は症状や問題もそのコミュニケーションパターンの中の一部に入っていることも多くあったりするということです。
家族療法を行うカウンセラーは、このような家族の中で繰り返し起こるコミュニケーションパターンを発見して、そのパターンに変化を与えることによって、治療を行っていきます。先の例では、子供に何か問題が起きても母親が駆け寄らないようにしたり、父親に駆け寄ってもらうようにしたり、子供に問題がマシな時にあえて問題が起きたようにふるまってもらったりなど、実はいくらでも変えようがあったりします。
家族療法では、このように繰り返されるコミュニケーションパターンや家族のシステムに時にはカウンセラーも交じりながら、様々な手法を使っていき家族に働きかけて、何らかの変化をもたらしたり、問題とされていたものに影響を与えていくもので、結果として問題や悩みがなくなったという良い変化を目指していくものです。
家族療法の実際
家族療法についてわかってきたんですけど、まだ自分が受けるには実際どんな風に進んでいくのかがわかったらいいのだけど?
それでは、家族療法を行うカウンセラーとして日本で一番著名な龍谷大学の東豊先生が行った有名な涙とおしっこという事例と虫退治という事例で家族療法のカウンセリングを方法をご紹介いたしましょう。
涙とおしっこ
小学校高学年のA君は夜尿が収まらずに相談にやってきました。修学旅行が近づき焦り相談にやってきた親子を対象に行った家族療法の事例です。数回の面接を経て、母親から実は姑との関係が悪かったが、Aくんの夜尿をきかっかけに共同することが増えていき、関係がよくなっていったという話がでます。
そこに父親を含めた家族3人に対して東先生が行った説明が、「Aくんのおしっこは、かつてのお母さんの涙。お母さんを泣かさないように自分がおしっこをしている。Aくんほど家族思いの子供はいない」と説明すると、父親は本来は自分が背負わなくてはいけない嫁と姑の問題を息子が背負ってくれていたと涙を流して、その後、Aくんのおしっこも本当に治ったというお話です。
ここには、「お漏らし」という否定的な見方をされていたものが、「お母さんのためのおしっこ」という肯定的な見方へと変えるリフレーミングの技法と呼ばれるものが取り入れられています。このリフレーミングの技法で、家族の中のコミュニケーションパターンを変えたという事例でした。
虫退治
過敏性腸症候群が原因で不登校になってしまった中学2年生のAくん。父と母とAくんに対して、東先生は「短期間で登校できるいい方法があるが条件がある。」と話始めます。「不登校というと、家庭環境や本人の特性など心理的なところに原因を求めてしまいがちだが、それは何も関係ない。そう考えてもらうことが条件である。」と続けます。
そして、「学校に行けないのは、Aくんになまけ虫が取り憑いたからで、悪いのはすべて虫のせいだ。」と話します。そのあと、なまけ虫退治の方法を紹介していきます。
①なまけ虫と書いた人型を用意する。そして、夜家族3人で「Aくんの中のなまけ虫出て行け。」と人型の周りに座り、順番に大声で怒鳴って叫ぶ。それを三周やったら、燃やし、翌日も同じように行う。
②なまけ虫がどのくらい弱ってきたかを測定する為に、1週間単位で行動目標を作ってその結果を記録する。なまけ虫がAくんを負かした日は、なまけ虫が喜ぶ餌をやらないようにする。
このような手順によって見事不登校が治ったという事例です。ここにも本人と問題を分けるという外在化という技法を使いながら、家族内で不登校をめぐって起こっていたコミュニケーションパターンを変えるという役割を果たしているというわけです。
今回の2つの事例は、マンガでわかる家族療法 日本評論社 東豊著の2つの有名事例からのご紹介でした。もしも他の事例も気になる方や家族療法についてマンガで学びたいという方は、上記の著書をお求めになってみて下さい。
家族療法というカウンセリングのまとめ
今回は、埼玉県さいたま市緑区東浦和でカウンセリングを行う臨床心理士・公認心理師の筆者が、家族療法というカウンセリングについてわかりやすく解説させて頂きました。
今回のまとめを読んで家族療法というものの理解が深まったのでしたら幸いです。また、最後にご紹介いたしましたが、マンガでわかる家族療法は読みやすく、家族療法について理解しやすいのでおすすめの本の一つですので、良ければご覧になってください。
今回のまとめに関する質問や感想はコメント欄までお願いします。また、今回ご紹介したような家族療法を受けたいという方は、是非当カウンセリングオフィスのお申込みページからお待ちしております。