一人語りで心を整えるゲシュタルト療法のエンプティチェアとは
皆さん、こんにちは。
あまり人には相談したくないけど、誰かに話を聞いて欲しい、そんなときはありませんか?そんな方法を叶えるものとして、ゲシュタルト療法のエンプティチェアと呼ばれるものがあります。
今回は、埼玉県さいたま市緑区でカウンセリングを行う臨床心理士・公認心理師の筆者が、ゲシュタルト療法の中で、比較的簡単に心を癒すエンプティチェア技法というもののやり方をご紹介していきたいと思います。
少し落ち着いで自分の向き合いたいという方や、過去や未来のことを考えてしまって今に注目できていないという方に是非、実践して欲しい方法になっています。
エンプティチェア技法の基礎となるゲシュタルト療法とは!?
まず始めにエンプティチェア技法の基礎になるゲシュタルト療法についてお話していきたいと思います。ゲシュタルト療法とは、精神科医のパールズによって開発された心理療法です。ゲシュタルトとは、ドイツ語で「全体性・統合性」という意味です。
それまでの精神分析学などの心理療法が、その人の過去に原因を求めて心の治療に当たっていくのに対して、このゲシュタルト療法は「今、ここで」の気付きであったり、未解決の問題を再体験することによって、自身の全体性の回復を求めていくものです。また、ゲシュタルト療法では、図と地という考え方が基本になります。皆さん、ルビンの壺というものをご存知でしょうか。
これは、壺にも見えるし、二人の人が向き合ったように見えるというものです。黒を「地」とみると壺が「図」に見えて、白を「地」とみると人の顔が「図」に見えるというのです。このように両方の見方ができずに、一方の見方しかできないという状態が、柔軟性が失われて、心の不適応が起こってしまっている状態とみるものです。
この心の柔軟性を取り戻していくのもゲシュタルト療法の中で大切にされている部分の一つです。それでは、代表的な方法として、エンプティチェア技法、ドリームワーク、ロールプレイと呼ばれるものがあります。
代表的なゲシュタルト療法の技法
次に簡単にゲシュタルト療法の代表的な技法についてどのようなものかご紹介していきたいと思います。
エンプティチェア技法
エンプティチェア技法とは、直訳すると空の椅子技法になります。自分の座る椅子と誰も座っていない空の椅子を用意します。誰も座っていない椅子に自分が思いを伝えたいという誰かが座っていると仮定して、思いや感情を伝えるという方法です。
ドリームワーク
ドリームワークとは、直訳すると夢の仕事ということになります。夢をその人の無意識にある欲求やメッセージを伝えるものであると考えて、夢で表現された内容を見ていく事によって、夢のメッセージに気付いていくという方法です。
ロールプレイ
ロールプレイとは、実際に演じてもらうということです。実際には成れない他者になってみたり、自分にとって重要な他者になりきって演じてみることで、抱えていた問題の解決や、他者の視点を得るという方法です。
今回は、このようなゲシュタルト療法の技法の中からエンプティチェア技法について詳しい方法をご紹介していきたいと思います。
簡単にできるエンプティチェア技法
先程簡単にご紹介したエンプティチェア技法について、具体的なやり方についてご紹介していきたいと思います。
(準備)
まずは自分の座る椅子ともう一脚の椅子の2つの椅子を用意して、向い合せるような形で置きます。椅子がないという方は、自分の座る座布団ともう一つの座布団というように2つの座布団を用意するのでも良いでしょう。
(手順)
①まずは自分の椅子に座って、気持ちと呼吸を整えてゆったりとした感じで座ります。
②次に自分が気持ちや思いを伝えたい誰かを思い浮かべます。(例、お母さん、お世話になった恩師、おじいちゃんなど)
③思い浮かべた人が向かいの椅子に座っているイメージを徐々に作り上げていきます。
④イメージが出来上がったらその人に伝えたい思いや気持ちを伝えていきます。今まで抱えていた思いをぶつけてみるのです。
⑤思いを伝え終わったら、自分が反対側の椅子に座り、相手の立場になって相手が返してくれそうなことを考えてみます。
⑥再び元居た椅子に戻って、相手の言葉を受け取り必要があればまた言葉を伝えて終了になります。
(実践)
①自分の座る椅子と、思いを伝えたい母親が良く座っていた椅子を用意して気持ちを整える。
②母親に関してのイメージを徐々に思い出していく。
③母親のよく着ていた洋服や髪型、座り方などもイメージしていき、椅子に座らせる。
④「生きていた間、迷惑ばっかりかけてしまい、全然親孝行もできなくてごめん。自分も親になって母さんのありがたみや苦労が改めて感じることができたよ。」と伝えられなかった思いを実際に声に出して伝えていきます。
⑤席を母親の椅子の方に座りなおして、母親が言ってくれそうなことを想像して返してみます。
⑥再び自分の席に戻って、母親が言ってくれそうな言葉を受けた気持ちを言葉にしていきます。
このような流れで実践していくのがエンプティチェア技法です。今回は一人で行っていく方法をご紹介していますが、実際のゲシュタルト療法では、カウンセラーと一緒に行っていきます。
ゲシュタルト療法のエンプティチェア技法のまとめ
今回は、さいたま市東浦和にあるカウンセリングオフィスを営む、心の専門家である臨床心理士・公認心理師である筆者が、ゲシュタルト療法という「今、ここ」を大切にする心理療法方法の中から、エンプティチェア技法という一人でも自分と向き合いながら、気持ちの整理ができる方法をご紹介いたしました。
今回のエンプティチェア技法を少し気持ちのもやもやがあって整理をつけたいときや、直ぐに気持ちを伝えられない誰かに気持ちを伝えたい時に実践してもらえたら幸いです。
今回のエンプティチェア技法について何か疑問に感じた方や、実際にエンプティチェア技法をカウンセラーの元でやってみたいと考える方は、是非カウンセリングオフィスのカウンセリングをご利用下さい。